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質問者:.さん

(ぼんやり霞む意識の中何を考えるでもなくパンを口へ運んで食い千切る。特有の仄かな苦さと辛み、渋みを含んだ赤色の粒の味が口内に広がった。ほんの少し硬く噛み切りにくい生地を幾度か咀嚼しては飲み込んでいく。窓枠、内側に作られた空間の上に片膝を立て、軽く腰掛けながら暗い世界を眺めた。まだ雨は止んではいないようだ。僅かに開けた窓の隙間からひんやりとした風が舞い込み頬を撫でては部屋へ侵入していく。微妙に火照った身体を冷ますには丁度良い涼しさと静けさだった。好きでもないキツく苦味のあるそれを誤魔化す為に選んだ、酸っぱさが溢れる液体を包んだ缶を持ち上げて、ゆるり何となしに手の内で回し。口をつけては広がる酸味に双眸を細めながら嚥下した。後味はやはり好ましくない。けれども味は好きな方だった、他のものに比べれば。ぼう、っと思考を覆うような感覚に浸りながら、微かな酩酊感に身を任せる。もっと深く溺れられたら良いのに。パラパラ、勢いを増した雨粒が屋根の上で跳ねる音がする。心地が良い。この中飛び出してしまえたなら、紛れてしまえたなら。そのまま消え去ってしまえたならこの蟠りは分からなくなるんだろうか。仄暗く、夜更けに沈む午前四時半。もうすぐで夜明け、朝へと切り替わる。どうかずっと沈んだままで居てくれと願った。再び煽った缶からは液体がぽつり、零れただけ。世界が醒める。望まなくとも。)
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